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官能小説 / 2026.10.09

社内の噂

痴女

会社には、いろんな人間がいる。

昼休みのオフィスは、朝とは別の生き物みたいだ。デスクで弁当を広げる者、机に突っ伏して寝る者、スマホのゲームに熱中する者。給湯室の前では、筋トレが趣味の先輩が、誰に見せるでもなく腕立てを始めている。それぞれが、それぞれの時間を、好き勝手に過ごしている。

「西野さん、女の落とし方、こんど教えてくださいよ」

隣で弁当をかきこみながら、後輩がへらへらと笑って言う。お前も女好きだなあ、と心の中で返しながら、俺は「企業秘密だよ」と、いつものように意味ありげに笑ってみせた。

向こうのテーブルでは、女子社員たちが声をひそめて、くすくす笑っている。「だから、あの人とは目を合わせちゃダメだって」「えー、なんで?」「見られただけで妊娠するって、先輩が」——きゃあ、と黄色い笑い声が上がる。

ギャル系の受付も、無口な経理の子も、若手を仕切るお局様も、上司に媚びる同期も。みんな、噂が好きだ。噂は、人を作る。本人の知らないところで、勝手に膨らんで、一人歩きする。

俺も、そのありふれた景色の、一部だった。

その日の夜も、俺は残業をしていた。金曜の、十時過ぎ。気づけば、デスクに肘をついたまま、いつのまにか、うたた寝をしてしまっていた。フロアの照明は半分落ちて、もう誰もいない。

肩を、トントン、と叩かれた。

はっと顔を上げると、女が立っていた。……誰だ? 見たことが、ない。いや、あるような、ないような。暗がりで、顔がよく見えない。こんな時間に、こんな場所に、知らない女。

まだ、夢の続きか? そう思った。さっきまで眠っていたのだ。これも寝ぼけた頭が見せる幻かもしれない。でも、頬をつねるまでもなく、ここは会社で、間違いなく見慣れた自分のデスクだった。じゃあ、この女は、誰なんだ——

考えている途中で、女の手が、俺の脚のあいだに伸びた。

ズボンの上から、股間を、下から上へ、ゆっくりと、なぞる。

その瞬間、思考が、溶けた。この女が誰かなんて、どうでもよくなった。夢でも、現実でも、どっちでもいい。今、気持ちいい。それが、すべてだった。

女の掌が、ズボンの上から形を確かめるように、もう一度ゆっくりと擦った。熱が布を通して伝わる。近づいた身体から、ほのかなシャンプーの香りと、肌に残る甘い香水が立ちのぼった。俺は背もたれに身体を預けたまま、息を整えた。ここで動じるわけにはいかない。いつもの、意味ありげな顔を作ろうとした。口の端を上げるより先に、女の指がベルトを外し、ファスナーを下ろしていた。

布の中から引き出された怒張は、すでに硬く反り返り、先端から透明な先走りを溢らせている。女はそれに触れなかった。ブラウスの前を自ら開き、柔らかな乳房を零す。薄暗い光の中で、丸い輪郭が揺れ、先端の乳首はすでに硬く色づいていた。綺麗な形のそれが、呼吸のたびにわずかに震える。

彼女は俺の顔をその谷間へ引き寄せた。柔らかな肉が頬を包み、温かい。乳首が唇に触れる。俺が吸い付くより先に、彼女は胸を擦りつけるように動かし、硬い粒で俺の口元をなぞった。吐息だけが熱い。

彼女はスカートを捲り、下着を横にずらすと、濡れた秘部を俺の太ももの上に押しつけた。熱い。秘裂の縁が、直接、肉茎の横腹を滑る。腰を前後に揺らし、愛液で俺のものを塗りたくるように擦った。花芯の硬い粒が、裏筋の上を何度も通り過ぎる。ぬるりとした蜜が、幹を伝って根元まで滴った。乳房が揺れ、乳首が俺の胸を擦る。柔らかい重みが、動くたびに掌へ落ちてくる。

俺の腰が、勝手に浮く。彼女は掌で腹を押さえ、動きを制した。主導は向こうにある。女は俺のものを自分の秘唇のあいだに挟み、割れ目のぬめりだけで上下させた。挿入はしない。カリの段差が秘口の縁に引っかかり、外れ、また引っかかる。先走りと愛液が混ざり、擦れるたびに甘い水音が立つ。暗がりのオフィスに、その音と、彼女の肌の匂いだけが低く漂った。

限界が近いのを悟ったとき、彼女は動きを止めた。先端を秘口に当てたまま、きゅっと窄めて締め、それからゆっくりと腰を落とす。狭い入り口がカリを咥え、一度だけ抵抗してから、熱い肉の中へぬるりと飲み込む。中はあたたかく、柔らかいヒダが絡みついて、奥へ奥へと引き込むように蠕動していた。半分ほど沈めたところで一度止まり、内壁を締め、根元まで一気に落とした。奥の柔らかい場所が先端を押し返す。

乳房が俺の顔の前で揺れ、乳首が唇をかすめる。女が腰を揺らし始める。抜ける寸前まで引き上げては、また深く沈める。肉壁が追いすがり、入れるたびにヒダが幹を撫で上げる。濡れた音が、静かなフロアに広がった。彼女の掌が俺の胸を押さえ、突き上げようとする腰を制する。俺は合わせようとして、かえってリズムを崩す。彼女はそれを無視し、自分のペースで搾るように締め、緩め、また締めた。

柔らかい腹と太ももが密着し、汗ばんだ肌の熱がじかに伝わってくる。汗の匂いと蜜の匂い、そして残った香水が混ざる。彼女の吐息が、俺の耳のそばで熱く乱れる。花芯が俺の下腹に擦れるたびに、内壁が痙攣するように窄まった。奥を突かれるたび、思考が白く飛んだ。慣れたつもりでいた呼吸が、もう整わない。腰の奥が熱くなり、先端が彼女の中で危険なほど膨張していく。

このままでは、中で出てしまう。抜かなきゃ、と思った瞬間、女の動きが深くなった。彼女は俺の焦りを、締め付けの変化で悟ったのだろう。耳元に唇を寄せ、熱い吐息とともに、低く囁いた。

「……中に、出していいよ」

その一言で、残っていた余裕が溶けた。女は深く沈めたまま腰を密着させ、内を波打たせて俺を誘う。内壁が強く、何度も収縮し、根元を搾るように締め上げる。とろとろとした蜜が結合部から溢れ、太ももの付け根を濡らしていく。乳房が激しく揺れ、乳首が俺の胸に何度も当たる。俺は声を殺しきれず、熱いものを脈打たせながら奥へ放った。彼女の身体が小さく震え、まだ余韻の痙攣が、俺のものをきゅっきゅっと締め続けていた。吐息だけが、暗がりの中に残っている。柔らかな乳房の熱が、まだ俺の頬に残っていた。

事が終わって、俺はデスクに背を預けたまま、天井を見上げていた。

結局、あの女が誰なのか、俺は最後まで分からなかった。暗がりの中で、声も、ほとんど出さなかった。ただ、慣れていた。何もかもを先回りして、俺を手玉に取って、搾り尽くして——俺なんかが、手も足も出ないくらいに。

ひとつだけ、覚えていることがある。去り際、女は俺の耳元で、くすっと笑って、こう囁いたのだ。

「噂って、面白いね。……あなたも、そうだったんだ」

それだけ言い残して、女は暗がりに消えていった。ヒールの音だけが、遠ざかっていく。

噂? なんの噂だ。俺は、締め直したネクタイに手をやりながら、しばらく動けずにいた。あれは本当に、現実だったのだろうか。それとも、残業明けの俺が見た、都合のいい夢だったのか。今となっては、確かめようもない。

月曜の朝が来れば、また、いつものオフィスが始まる。昼休みには、今日もどこかで、誰かの噂話に花が咲くのだろう。

——あの女も、きっと、この中にいる。

そう思うと、背筋が、ぞくりとした。

To Be Continued 社内の噂 解編
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